Kova とは
Kova は、AI エージェントに金融機能を持たせるためのオープンソースプラットフォームです。暗号ウォレット管理、policy で守られた agent モード実行を、標準化された CLI とスキルセットとして提供します。
解決する問題
従来の AI アシスタントは、リアルタイムでの支払い、外部サービスの購入、複雑なタスクの自動化など、実世界での金融的アクションを実行する能力に制約がありました。Kova は以下の課題を解決します。
- 支払い機能の欠如: AI エージェントが独自にサービスを購入したり、支払いを実行したりできない
- 拡張性の制限: 新しい機能を追加するための標準化された Skill システムがない
- サービス発見の困難: AI エージェントが利用可能な外部サービスを発見し、統合する方法がない
- マイクロペイメントの複雑さ: 1 リクエストごとの課金システムを実装するのが困難
- セキュリティリスク: 秘密鍵の管理と policy ガードを安全に行う方法がない
2 つのコンポーネント
Kova は、2 つの主要なコンポーネントで構成されています。
1. Kova CLI コア(kova)
kova は、AI エージェントに金融機能を提供するコマンドラインツールです(npm パッケージ名 kova、バイナリ名 kova として配布)。
主な機能:
- ウォレット管理: Open Wallet Standard(OWS)に基づく HD ウォレットの作成・管理
- AES-256-GCM 暗号化による秘密鍵の保護
- BIP-32 / BIP-44 階層的鍵導出
- 複数の EVM 互換チェーンに対応(Base / Ethereum / Polygon / Sepolia など)
- トークン送金: ネイティブトークン(ETH / POL)と ERC-20(USDC / USDT / JPYC)に対応
- 既定で dry-run、
--broadcastを明示したときのみブロードキャスト - ERC-7702 ガスレス送信オプション(対応チェーンのみ)
- 既定で dry-run、
- エージェント認証経路(Signer): ローカル passphrase(owner)と OWS API key(credential)の 2 系統を、
credentialの有無だけで自動切り替え - Policy 強制:
enforcePolicy()ガードがすべての credential 経由操作を 1 日上限・許可リストでチェック - CLI オブザーバビリティ: 対話端末では人間向けの整形表示、パイプ・スクリプト経由では JSON を出力。
kova statusで現在の wallet / authMethod / policy 状態を一目で確認
主要コマンド:
| コマンド | 用途 |
|---|---|
kova init | インタラクティブオンボーディング。ウォレット作成から AI 接続設定(permissive policy + API key 発行)までをまとめて行う |
kova launch <agent> | 現在の agent profile(credential + apiKeyId)を環境変数注入した状態で指定エージェント(claude 等)を起動。AI エージェントが credential を意識せず agent モードで kova を呼べる |
kova status | wallet / activeProfile / authMethod / policy.enforcement / agent セットアップ状況を 1 コマンドで集約表示 |
kova policy update | passphrase 認証付きで policy を atomic に更新 |
使用例:
# 初回セットアップ(ウォレット作成 + AI 接続設定)
kova init
# 残高確認(対話端末では整形表示、パイプ時は JSON)
kova balance
# ETH 送金(dry-run)
kova send --name my-wallet --to 0x742d35Cc6634C0532925a3b844Bc9e7595f0bEb --amount 0.001 --chain base
# USDC 送金(実ブロードキャスト)
kova send --name my-wallet --to 0x742d35Cc6634C0532925a3b844Bc9e7595f0bEb --amount 10 --token USDC --chain base --broadcast
# 現在の認証経路 / policy / agent 設定を確認
kova status --pretty対象ユーザー:
- AI エージェントに金融機能を追加したい開発者
- Claude / GPT / Gemini などのモデルを使った自律システムを構築する開発者
- 支払い機能を持つボットやオートメーションを構築する開発者
2. Kova Skills(packages/skills)
モノレポ内のパッケージで、AI エージェントが自然言語の指示を kova コマンドに変換して実行するための拡張ポイントです。各 Skill はトリガー条件・入力バリデーション・エラーハンドリングを内包し、エージェントが安全にウォレット操作・決済・テストを自動化できるようにします。
主な機能:
- 標準化された Skill 定義: TypeScript で記述された Skill テンプレート
- 自然言語トリガー: 「USDC を送って」「残高を確認して」「テストして」などの指示から適切なコマンドを組み立て
- 公式 Skill ライブラリ: ウォレット操作・決済・テスト・設定管理を網羅
- カスタム Skill 開発: 独自の Skill を作成し、Claude Code などで利用可能
サポートするエージェント:
- Claude(Anthropic)
- GPT(OpenAI)
- Gemini(Google)
- その他の LLM ベースのエージェント
使用例:
# Skill のインストール(Claude Code 環境へリンク)
cd packages/skills
ln -s $(pwd)/skills/* ~/.claude/skills/
# Claude Code 内で AI エージェントが Skill を自動実行
# 例: "USDC の残高を確認して" → check-balance Skill が実行される主な公式 Skills:
| Skill | 役割 | 対応コマンド |
|---|---|---|
| create-wallet | ウォレット情報確認 | wallet info |
| check-balance | ネイティブ / ERC-20 残高確認 | balance |
| send-tokens | トークン送金(dry-run デフォルト) | send |
| swap-tokens | DEX でのトークンスワップ(coming soon) | swap |
| run-tests | Kova 統合テストの自動実行 | wallet / balance / send |
| manage-config | デフォルトチェーン / ウォレット / RPC URL 設定 | config set / get / list |
対象ユーザー:
- 既存の SaaS サービスを AI エージェントに統合したい開発者
- 業務自動化のためのカスタム Skill を作成したい企業
- オープンソースコミュニティに貢献したい開発者
技術基盤
Kova は、以下の技術標準に基づいて構築されています。
Open Wallet Standard(OWS)
公式サイト: openwallet.sh
Open Wallet Standard は、クロスプラットフォームの暗号ウォレット標準です。
OWS の役割:
- 暗号化: AES-256-GCM 方式による秘密鍵の保護
- 認証付き暗号化により改ざんを検知
- 鍵導出関数(KDF)によるパスワードベースの暗号化
- HD ウォレット: 階層的な鍵管理(BIP-32 / BIP-44)
- 単一のシードフレーズから複数のアドレスを生成
- トランザクション署名: ECDSA(secp256k1)+ EIP-155 リプレイ対策
- OWS API key: agent モード用 credential。
kova initの AI 接続設定フェーズで発行され、policy hashを埋め込むことで policy 改竄を検知
サポートするネットワーク:
- Base(Chain ID: 8453)
- Ethereum(Chain ID: 1)
- Sepolia(Chain ID: 11155111)
- Polygon(Chain ID: 137)
- その他の EVM 互換チェーン
Signer 経路(owner / agent)
kova は credential(OWS API key)の有無だけで署名経路を切り替えます。
| 経路 | 認証 | policy enforcement | 主な用途 |
|---|---|---|---|
| owner | ローカル passphrase | スキップ | 人間が対話的に承認する操作 |
| agent | OWS API key(credential) | enforcePolicy() で必ずチェック | 無人運用される AI エージェント |
claude などを直接起動すると、新しい kova プロセスが disk 上の credential を読み取って agent 経路で動作します。kova launch <agent> は環境変数を sanitize して起動するための任意のラッパです。
対象読者
Kova は、以下のユーザーを対象としています。
1. AI 開発者
ゴール: Claude / GPT / Gemini などのモデルを使って、自律的なエージェントを構築したい開発者。Kova を使うことで、エージェントに金融機能と外部サービスへのアクセスを追加できます。
使うツール:
- Kova CLI コア(
kova) - Kova Skills
ユースケース:
- 自律的なアシスタントエージェントの構築
- 支払い機能を持つボットの作成
- データパイプラインの自動化
2. Skill 開発者
ゴール: 新しい Skill を作成し、コミュニティに公開したい開発者。Google Workspace / GitHub / Slack などの統合を標準化された方法で提供できます。
使うツール:
- Kova Skills(開発フレームワーク)
- TypeScript 開発環境
ユースケース:
- 社内ツール用のカスタム Skill の開発
- オープンソース Skill のコミュニティへの貢献
主な特徴
マルチチェーン対応
Kova は、複数のブロックチェーンネットワークをサポートしています。
- Base(Chain ID: 8453)— 推奨。低手数料、高速トランザクション
- Ethereum(Chain ID: 1)— メインネット。高いセキュリティ
- Sepolia(Chain ID: 11155111)— テストネット。開発・検証用
- Polygon(Chain ID: 137)— 低手数料 Layer 1
- Optimism(Chain ID: 10)— Layer 2
- Arbitrum(Chain ID: 42161)— Layer 2
- その他の EVM 互換チェーン
安全設計
Kova は、セキュリティを最優先に設計されています。
- ローカル鍵管理: 秘密鍵はローカルデバイスに保存され、外部に送信されない
- 暗号化: AES-256-GCM 方式による秘密鍵の暗号化
- dry-run デフォルト:
send/callなどはデフォルトで dry-run、--broadcastを明示したときだけブロードキャスト - Policy 強制: agent モード(credential あり)の操作は
enforcePolicy()を通過しないと実行されない - 改竄検知: API key に policy hash を埋め込み、policy 改竄を検知して
POLICY_TAMPEREDで拒否
出力モード(pretty / JSON)
Kova は実行環境に応じて出力形式を自動で切り替えます。対話端末(TTY)では人間向けの整形表示、パイプ・リダイレクト・CI・AI エージェント経路(非 TTY)では JSON を出力します。これにより、人間には読みやすく、AI エージェントやスクリプトはそのまま JSON を解析できます。
--json: TTY でも JSON を強制(kova balance --json | jqなど)--pretty: 非 TTY でも整形表示を強制KOVA_JSON=1: 環境変数で JSON を強制(CLI フラグを付けにくい環境向け)
使用例:
kova balance出力:
{
"ok": true,
"data": {
"rows": [
{
"chain": "base",
"tokenKey": "native",
"symbol": "ETH",
"balance": "0.5",
"status": "ok"
}
]
}
}ユースケース
実コマンドベースのユースケースは ユースケース を参照してください。代表例:
- マルチチェーンウォレット管理: 1 つのウォレット名で Base / Polygon / Ethereum を横断
- AI エージェントの自律送金: policy で守られた agent モードでの自動トークン送金
- 組織・DAO の自動支払い: バッチ送金スクリプトを CI/CD に組み込み
次のステップ
- インストール — Kova をセットアップする
- クイックスタート — 最初のウォレット作成と送金を試す
- Skills 概要 — 公式 Skill を確認する
- AI エージェント統合 /
kova status— エージェント連携と状態確認
関連リンク: